本文へスキップ

水俣の総合内科・呼吸器科・胃腸科・小児科・神経内科なら市川内科クリニック

お問い合わせはTEL.0966-62-0707

〒867-0023 熊本県水俣市南福寺3−1

市川院長の『病気の話』Blog

話題の病気

第7話 禁煙外来のお知らせ(禁煙のすすめ)

たばこの害

 喫煙による健康被害はたくさんありますが、中でも、1)慢性呼吸器疾患2)心・血管疾患3)がん、 が代表的です。
 たばこの煙には実に400種類以上の有害物質が含まれていますが、中でもニコチン、タール、一酸化炭素が重要です。長年の喫煙習慣によって慢性気 管支炎や肺気腫などの慢性閉塞性肺疾患(COPD)や虚血性心臓病(狭心症、心筋梗塞)、脳血管障害(脳卒中)、慢性動脈閉塞症、バージャー氏病 などの心・血管病のリスクが高まります。
 ニコチンはアルカロイドの1種で青酸カリの約2倍の強い神経毒性を示します。中脳辺縁系のドパミン神経系を介する強い依存性を形成し ます。すなわち、ニコチンは脳細胞に作用し依存性の高い物質であり、このニコチン依存症こそが、たばこがやめられない原因です。その依存性はコカインや ヘロインと同程度とされます。
 タールには発癌性がありこれが口腔内粘膜や咽頭喉頭部、気管支や肺組織に沈着することによって口腔内がん、咽頭がん、喉頭がんや肺がんの原因 となります。大腸がん、肝臓がん、膀胱がんなども喫煙者では増加することが報告されています。
 一酸化炭素(CO)は赤血球内のヘモグロビン(血色素)に結合して血管収縮作用や動脈硬化を促進します。血液が濃縮傾向となり血管が詰まりやす くなり足の血管が詰まって潰瘍ができる慢性動脈閉塞症や脳梗塞の原因となります。狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患のリスクも高まります。女 性は喫煙によって不妊、月経異常など性機能への影響も指摘され、妊婦の場合胎児への影響も懸念されます。子供はニコチン依存症になりやすことも 報告されています。このように喫煙は「百害あって一利なし」であることは明らかです。

どうしてたばこがやめられないのか

 たばこがやめられないのはニコチン依存症が原因。
 たばこが健康に悪いということはパッケージにも表示されており、多くの喫煙者はやめたいと思っており1,2度は禁煙を試みたことがある人が多い。 ところが実際にはなかなかやめるのは難しい。これは単に喫煙者の意思が弱いのではなく、たばこに含まれるニコチンの依存症に起因するところが大きい。 ニコチンは神経伝達物質であるアセチルコリンに分子構造が似ており、コカインやヘロインと同様の機序すなわち中脳辺縁系のドパミン神経系を介した 依存性形成を来すとされています。喫煙によって口腔粘膜や気管支・肺から吸収され血中に入ったニコチンは血液と脳組織の関所である血液脳関門(BBB) を簡単に通過し脳のニコチンレセプターと結合します。すると中枢神経のドパミン神経系が活性化され、脳内にドパミン(脳内モルヒネ)が分泌されます 。これが、たばこが美味しいと感じる原因であり、耽溺性・依存性の原因です。喫煙を続けることにより脳内のニコチンレセプターの数が減少し (これをダウンレギュレーションといいます)脳内の神経伝達が減少した状態となりイライラ感や不安感として現れます。このような状態がたばこを 止めたくても止められないニコチン依存症です。

たばこを止めるには

 たばこを止められないのはニコチン依存症が原因です。ニコチン依存症はすなわち「たばこ」への心理的依存とニコチンに対する身体的依存により 形成される薬物依存症の1つと考えられ、その点に作用する禁煙補助薬が保険診療で使用可能です。禁煙補助薬には貼付薬(ニコチンパッチを貼る)、 内服薬、ニコチンガムの3種類があります。このうちニコチンパッチ、内服薬は一定の条件下で保険診療ができます。ニコチンパッチは医師の処方を 必要とするタイプと薬店で購入するタイプがあります。
2006年から健康保険で禁煙治療が可能になりました。しかし、これには一定の要件を満たす必要です。  まず、その医療機関が禁煙治療の認定医療機関(敷地内全面禁煙、院内で呼気CO濃度測定器・ピコスモーカーライザーを有するなど)であること が前提で、患者側要件としては@ニコチン依存症を診断するテスト(TDS)で5点以上、Aブリックマン指数(BI)・1日の喫煙本数×喫煙年数が 200以上、B禁煙の意思が明確なこと、C医師の禁煙治療の説明に同意することです。なかでも私はBの禁煙の明確な意思を持っていることが最も 大切と思っています。最初に話しましたようにニコチン依存は覚醒剤や麻薬に匹敵するほど強いものです。生半可な気持ちでは禁煙に成功するこ とはできません。禁煙治療薬のメーカーや学会の禁煙治療の啓蒙プログラムで「お医者さんと禁煙しよう」というキーフレーズをマスコミ等でみ かけますが、私はあまり賛成ではありません。禁煙は自分自身の問題です。人に頼らずの強い意志で禁煙をすることが大事です。われわれ医療者 はそのお手伝いをするに過ぎないのです。
 保険診療における禁煙治療は12週間が基本です。その間、5回の通院が必要です。健康保険で禁煙治療のみを行った場合の自己負担額は13,000から 20,000円程度です。禁煙のメリットは沢山あります。1,2か月で咳、痰の消失、息切れの改善など心肺機能の改善がみられ食事が美味しくなります。 数年後には脳血管障害のリスクが半減し、10年後には肺がんや口腔がんのリスクも低下します。たばこ代が要らなくなり経済的なメリットも大きいのです。
 たばこは「百害あって一利なし」です。さあ、禁煙を始めましょう。