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市川院長の『病気の話』Blog

話題の病気

第8話 花粉症(アレルギー性鼻炎)に対する新しい治療

花粉症に対する新しい根治的な治療法‐舌下免疫療法とは

 気管支喘息やアレルギー性鼻炎では以前から原因抗原(アレルゲン)が明確になった場合、その抗原エキスを微量から皮下注により投与して、その抗原に体を慣らしていく治療(減感作療法、脱感作療法)が小児科や耳鼻科で行われ有効性が認められてきました。私は30年以上前、大学病院勤務医時代、お茶を飲むと気管支喘息を起こす医学生に対して緑茶成分がアレルゲンであることを突き止め製薬会社(鳥居薬品)に依頼し抗原エキスを作成し減感作治療を行い根治させた経験を有しています。
 しかし、皮下注射の場合、医療機関でないと行うことが出来ず、また痛みを伴いますので治療継続性に問題がありました。最近、皮下注射による投与ではなく、経口投与による減感作療法が行うことができるようになりました。すなわち、2014年秋からスギ花粉症に対してスギ舌下液(シダトレン)による舌下免疫療法が、保険診療可能となり、さらに2015年家ダニ(ヤケヒヨウダニ、コナヒョウダニ)に対しての2種類の舌下免疫治療薬(アシテア舌下錠、ミティキュア舌下錠)が保険収載されて、通年性アレルギー性鼻炎に対しても舌下免疫療法が行えるようになりました。この治療薬は飲み薬(内服薬)ですので注射薬と異なり病院に行かなくて、通常の内服薬と同じく家やその他で内服することによって治療をすることができます。

花粉症の基礎知識

 植物の花粉が原因となって、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、眼のかゆみなどのアレルギー症状がおこる病気です。季節性がみられます。
 スギ花粉症は、春先2月から4月にかけてスギ花粉が飛散する時期に発症します。日本人の4人に1人がスギ花粉症と言われています。花粉症の原因植物はスギ花粉以外にヒノキ、シラカバ、ハンノキなどが同じく春先に発症します。花粉症には地域性があり、北海道には無いと言われています。
 初夏から秋にかけて発症するのは草花の花粉であるイネ科のカモガヤ、ホソムギなど、キク科のブタクサ、ヨモギなどです。

通年性アレルギー性鼻炎とは

 花粉の飛散時期のみならず一年中、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、眼のかゆみなどアレルギー症状が出ます。この主な原因(アレルゲン)はダニ、真菌(カビ)、昆虫、ペットの毛などです。日本人の4人に1人弱が通年性アレルギー性鼻炎と言われています。スギ花粉症とダニによる通年性アレルギー性鼻炎を合併している人も少なからず見られます。
 通年性鼻炎症状を示すものに血管運動性鼻炎があります。これは、アレルゲンははっきりせず、温度変化などに鼻粘膜が反応し症状を出します。

花粉症、アレルギー性鼻炎の診断

 問診(症状を詳しく医師に伝えること)に加えてアレルゲンを特定することが必要です。一般的には血液検査によっていろいろなアレルギーを起こす可能性のある抗原(アレルゲン)を同時に測定することができます。36種類の抗原特異的IgE抗体を測定するマスト36という検査が一般的です。この検査は保険診療で可能ですが3割負担で7.000円弱費用負担がかかります。

アレルギー性鼻炎の治療

 アレルゲンの除去と回避:花粉の飛散時期には不要な外出は避け、必要で外出する場合はマスク、ゴーグルを使用する。外出から帰宅した場合玄関先で服などを叩いて花粉を家の中に持ち込まないように心がける。花粉飛散時期に外に干した洗濯物や布団は取り込むときによく埃を払う。ダニは布団、絨毯、畳など温かく湿気のある場所を好みますので家の換気をよく行い掃除をこまめに行い、週に2回程度の布団干しなども効果があります。最近では多くの空気清浄機も市販されていますが、これもかなりの効果があるという耳鼻科専門医もいます。
  対症的治療:各種の抗アレルギー薬の内服、点鼻、点眼が行われます。

アレルギー性鼻炎の新しい治療―舌下免疫療法

  最近、対照的治療に加えて根治(完全に治る根本的な治療)が目指せる新しい治療法が登場しました。
@ アレルギー症状の根治が期待できます。
A すべての患者さんに有効ではありません。
B 原因物質であるアレルゲンを微量ですが、投与しますので投与局所や全身性アレルギー症状が起こることがあります。
C 治療は3年以上かかります。3から5年の投与持続した方が治療効果が高いと言われています。

舌下免疫療法の実際

 現在投与可能な治療薬は、スギ花粉症治療薬がシダトレン舌下液、ダニアレルゲンによる通年性アレルギー性鼻炎の治療薬がアシテアダニ舌下錠、ミティキュアダニ舌下錠の2種類があります。舌下免疫療法の利点としては皮下免疫療法のように注射ではなく内服投与ですので痛みが無い、自宅で内服できる点です。初めて服薬する場合は医療機関で医師の厳重な監視のもとに服薬し、その後30分以上、院内で様子を観察します。治療薬を舌の下に置いて一定時間保持した後、飲み込みます。その後5分間はうがいや飲食は控えてください。舌下する場合、慣れるまでは鏡を見ながら行うのが確実です。
 口の中の腫れたような感じ、痒み、不快感や、のどの刺激感、不快感、耳のかゆみや頭痛などが服用初期に起こることがあります。これらの軽い副作用は服用を続けることにより次第に改善することが多いようです。
 かぜなどで発熱していたり、体調が悪い時や喘息を合併している人で喘息症状が強い時には服用を一時止めてください。服薬の際の注意点などは医療機関で詳しく説明します。
治療期間は3年から5年続けることが大切です。